大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和38(オ)128 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人神代宗衛の上告理由一について。

所論は、原判決が被上告人主張のごとき売買契約解除と本件自動車の引揚げの特

約が当事者間になされたことを、適切な証拠に基づかず、証拠の玩味をすることな

く不当に認定したと主張するが、証拠の取捨判断、事実の認定は原審の専権に属す

るものであり、論旨は上告理由として採用できない。

同二について。

所論中、原審の事実認定を非難する点は、前示のごとく採用の限りでない。

原判決が「しかし、最も動的であつて、一たん占有を移転すれば所在の捕捉すら

事実上困難になりがちな自動車の月賦販売において、当事者間の特約により所有権

を留保し、割賦代金の不払を契約解除権の発生原因とし、更に解除と共に目的自動

車の引揚げを予め買主において約諾することは、契約の自由として許さるべきであ

つて、公序良俗に反するものとは言えないし、特段の事情なき限りこの予めなされ

た承諾に基き目的自動車を引揚げることを以て、直ちに自力救済を容認するものと

は解し難い」とした判断は、首肯できる。この判示をとらえて、原判決が自力救済

を認め法秩序を紊る判断をしたとする論旨は、原判示を正解しないことに基づくも

ので採用できないし、原判決の右判断が契約自由の原則の限界を無視するものであ

ると論難する点は、独自の見解にすぎないものであつて採用し難い。

また、所論は、本件自動車を被上告人が引き揚げるについて、上告人の留守中そ

の家族である十三才の少年に対し被上告人の使用人がその旨を告げただけであるか

ら、上告人としては空巣をねらわれたも同然であり、このような被上告人の行為は

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民法一条にいう権利の濫用にあたる旨主張するが、原判決が挙示の証拠関係によつ

て認定判示するところによれば、上告人は再三の請求にもかかわらず、残代金二〇

〇、〇〇〇円の支払をなさず、被上告人においては前記特約に基づき売買契約を解

除し本件自動車を引き揚げることとし、右自動車引揚げの数日前に被上告人会社の

営業部員たるEが上告人方を訪れたが、上告人が不在であつたので、家人に右の趣

旨を伝え、その頃上告人もこれを知つたこと、被上告人はその後訴外D経営の整備

工場から本件自動車を引き揚げたが、その際右Dより上告人に対する自動車修理代

金三、九三〇円の支払請求を受けこれを被上告人において立替支払つたこと、被上

告人は上告人に対し、その三日後の日付の内容証明郵便を以て、右契約解除の意思

表示をなしたうえで自動車を引き揚げたこと及び原判示の期限までに未払代金の支

払がない場合本件自動車を処分する旨の通知をしたが、右通知を受けとつた上告人

から期限を経過しても回答がなかつたので、はじめてこれを他に売却したというの

であるから、上告人が被上告人に空巣をねらわれたも同然であるとして権利濫用を

いう所論は、すでに事実関係において前提を異にし、採用の限りでない。

同三について。

論旨は、所論代金支払について上告人が被上告人宛の約束手形を振り出し、その

支払場所は上告人宅と定められていたのに、被上告人の支払呈示がなされなかつた

ことを以て、上告人の本件代金支払に不履行の責がなく、従つて被上告人の本件契

約解除は無効であると主張し、その証拠として甲二号証の一ないし一〇の約束手形

振出の控と原審証人Eの証言の存することを指摘して、この点につき何らの判断を

なさなかつた原判決の違法をいうが、原判決の判文上は勿論記録を検しても、上告

人が原審において右主張をしたことは認められず、右主張のあることを前提とする

論旨は採用の限りでない。

同四について。

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所論は、被上告人が昭和三六年二月四日所論自動車の引揚げをなした後同年二月

九日付内容証明郵便による代金支払の催告をしたことを原審が認定判示していると

して、契約解除権行使の前提たるべき代金支払の催告以前に自動車引揚げをなした

ことの非について原判決が何らの判断を示さない違法があると主張するが、右契約

解除権行使ならびに自動車の引揚げは、原判決認定の前示約定に基づくものであり、

所論のごとき代金支払の催告を前提としてなされねばならぬものでなく、所論内容

証明郵便によつて未払代金を支払うべき旨上告人に通知したことは、契約解除の前

提たる催告の趣旨としてなされたものと判示されてはいないのである。これを要す

るに、論旨は、原判決の判文を正解しないことに基づくものであり、原判決には、

判決に影響すべき判断遺脱は存しないから、所論は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 横 田 正 俊

裁判官 石 坂 修 一

裁判官 柏 原 語 六

裁判官 田 中 二 郎

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